第一章 願い
思い出せる景色と、
思い出せない景色があります。
当時は何気ない毎日だったはずなのに
何十年も経ってから、ふと、その頃の空気まで
思い出してしまうことがあります。
私たちの家づくりは、
そんな記憶と向き合うことから始まりました。
第二子が生まれる三か月ほど前の、
うだるように暑い夏の日。
空も見えない小さな賃貸マンションの中を
長女が楽しそうに走り回っていました。
それまで毎週のように、
家族で山や森、川や海へ出かけていました。
もうすぐ家族が増えれば、しばらくはそんな遠出も難しくなるだろう。
そんなことを考えながら長女を眺めていたとき
不思議なくらい自然に、一つの思いが浮かびました。
庭が欲しい。
そのときは、それ以上の理由を持っていませんでした。
その日は土曜日でした。
「思い立ったが吉日。」
その日のうちに住宅展示場へ向かいました。
そこから、私たちの家づくりが動き始めました。