里山の家

「里山の家」の窓からは
季節ごとに表情を変える
田畑や山並み。

朝の光や夕暮れの色
風に揺れる草木の気配を
感じるためのデッキや窓辺。

自然の移ろいを感じながら
ゆったりと時を重ねていく豊かさを
暮らしに取り込んだ木の家です。

■ 外皮平均熱還流率 UA値:0.46W/(㎡・K)
  =6地域 HEAT20 G2水準
  =断熱等性能等級6

Data

戸建住宅

所在地
川西市
延床面積
97.26㎡ (29.42坪)

オーナー様の声

第一章 願い

思い出せる景色と、
思い出せない景色があります。

当時は何気ない毎日だったはずなのに
何十年も経ってから、ふと、その頃の空気まで
思い出してしまうことがあります。

私たちの家づくりは、
そんな記憶と向き合うことから始まりました。

第二子が生まれる三か月ほど前の、
うだるように暑い夏の日。

空も見えない小さな賃貸マンションの中を
長女が楽しそうに走り回っていました。

それまで毎週のように、
家族で山や森、川や海へ出かけていました。
もうすぐ家族が増えれば、しばらくはそんな遠出も難しくなるだろう。

そんなことを考えながら長女を眺めていたとき
不思議なくらい自然に、一つの思いが浮かびました。

庭が欲しい。

そのときは、それ以上の理由を持っていませんでした。
その日は土曜日でした。

「思い立ったが吉日。」
その日のうちに住宅展示場へ向かいました。
そこから、私たちの家づくりが動き始めました。


第二章 輪郭のある風景

いくつかの家を見るうちに、
シーエッチ建築工房の見学会へ足を運ぶことになりました。

その見学会は、一軒の平屋でした。
玄関をくぐったときのことは、今でもよく覚えています。
木や土といった自然素材だけではなく、光の入り方や風の抜け方
その家に流れている空気までが、とても自然に感じられました。

「こんな暮らしがしたい。」
建物を見ながら、初めてそんなことを思いました。

その日、初めてお会いした
浪江さんも印象に残っています。
物腰の柔らかな話し方と、穏やかな笑顔。
こちらの話を急いで何かに当てはめるのではなく、まず聞いてくださる。
この人なら安心して話ができそうだと思いました。

それから何度か見学会へ足を運んだ頃
ふと、ある記憶がよみがえりました。
「この工務店、知っている。」

十年ほど前、まだ結婚もしていない頃
この地域で家を建てるならどんな会社があるのだろうと調べたことがありました。
当時、一つだけ印象に残っていた工務店がありました。
それが、シーエッチ建築工房でした。

その頃はただ、「素敵な家だな」と思っただけでした。
それが十年という時間を経て、自分たちの家づくりに
つながるとは思ってもいませんでした。


第三章 遠回りの時間

土地が決まると、設計が始まるまで半年ほど待つことになりました。
家づくりを始めたばかりの頃なら、「長いな」と思っていたはずです。

けれど、その半年は
思っていたより忙しく、思っていた以上に楽しい時間になりました。

見学会へ足を運び、
昔から好きだった建築家や造園家の本を読み返しました。
不思議なことに、同じ本なのに、目が止まる場所だけが変わっていました。
以前は建物ばかり見ていたのに、その頃は窓の先に見える景色や、
庭に落ちる影、そこに座っている人の姿ばかり見ていました。

分譲地では、周りの家が少しずつ建ち始めていました。

何かと理由をつけては現地へ行き
境界から建物までの距離を測ったり、
日射をシミュレーションしたり。

冬には一階へ日が届かない時間もあると分かり
一人で勝手に頭を悩ませていました。
今思えば、ずいぶん楽しい悩みでした。

その頃、私たちは
家づくりの目的を何度も書き直していました。

鳥や虫の声を聞くこと。
庭で実を摘むこと。
土や木に触れること。
光と影の移ろいを感じること。
家の中にも、少しの遊び心があること。

そして、いつか子どもたちにとって
帰りたいと思える場所になること。

書き直すたびに、欲しい部屋や設備よりも
この家でどんな時間を過ごしたいのかが少しずつ見えてきました。
振り返ってみると、昔から遠回りする時間が好きだったように思います。

旅の途中でも、登山でも。
景色を眺めながら腰を下ろし、来た道を振り返る。
家づくりも、どこか似ていました。


実は、その穏やかな半年の少し前には
まったく違う時間が流れていました。

シーエッチ建築工房の見学会へ通い始めた頃
ほぼ同時に「ここだ」と思える土地が見つかり、
そこからは息つく間もなく決めることが続きました。

初めてのことばかりで
うまく進まないこともあり、何度も心が折れそうになりました。
浪江さんにも、ずいぶん力を貸していただきました。

ようやく一段落した頃、その顛末をお話しすると
浪江さんがこう言ってくださいました。
「どんな土地で、どんな暮らしをしたいかが
 見えていたから、乗り越えられたんですね。」

その言葉を聞いたとき、不思議と
「ここまでやってきてよかった」と思いました。
そして、この人になら、この先も安心して任せられる。
張り詰めていたものが、少しほどけたような気がしました。


第四章 かたちになるもの

設計が始まる日を、私たちは心待ちにしていました。
最初のプランを見せていただく日は、特に楽しみにしていた一日でした。

浪江さんの図面が、机の上に広げられます。
気づけば、私はもう、その家へ帰る道を歩いていました。

木々の間を抜ける、小さな小径があります。
一歩足を踏み入れるたび、それまで背中にあった
街の気配が、少しずつ遠ざかっていく。
代わりに、風が木々を渡る音が近づいてくる。

景色は見えていないのに、家へ帰ってきたことが分かる。
まだ建ってもいない家なのに、その静けさまで感じられるような気がしました。

木々を抜け、玄関を入る。
階段の下をくぐったその先には、田んぼの向こうに山並みが広がる。
図面には一本一本の線しか描かれていないはずなのに、
その先には、もう暮らしがありました。

私たちが言葉にして渡したものが、
自分たちでは思いつかなかった形になって返ってきた。
そのことが、何より嬉しかったのだと思います。


そこから細部を
一緒につくり込んでくださったのが、石田さんです。
自分でも整理できていないことを、
そのまま話してしまうことがよくありました。
断片的で、感覚的で、ときには矛盾している。

それでも石田さんは
その中から大切なものをすくい上げ
少し違う形にして返してくださいます。
「そうそう、言いたかったのはそれです。」
そんなやり取りが何度もありました。

打ち合わせを終えたときに残るのは
「決まった」という感覚より、「少し近づいた」という感覚でした。

もう一つ、見学会へ行くたびに繰り返していたことがあります。
妻と二人で、「木の香りが心地よいね。」と話すことです。
見学会の家を探していると香りがして、
近づいてきたなと分かることさえありました。

ところが、その話を石田さんにすると
「そうですか?」
と、いつも少し不思議そうに、にこにこしていました。
毎日その中にいると、気にならなくなるのだそうです。

せっかくの木の香りなのに、と
最初は少しもったいない気もしました。
けれど今は、その日が来るのを少し楽しみにしています。


第五章 原風景

地鎮祭の日。
土地には、まだ何もありませんでした。
杭と、それを結ぶ一本のロープだけが、
頼りなく、それでも確かに家の輪郭を描いていました。

図面では何度も見ていたはずなのに、
その日初めて、家の大きさを足元で感じました。

北東の角に立ったとき、
不思議なくらい鮮明に、小さい頃の庭がよみがえりました。
家族の中で「三角地帯」と呼んでいた、小さな庭。

父や弟と土を掘り、山や川をつくって泥だらけになったこと。
スイカを育てたこと。
冬の遠足の日には、庭越しに見える大雪を恨めしく眺めたこと。
夏には長く伸びる西陽と追いかけっこをしながら、食卓で宿題をしたこと。
当時は、どれも特別な出来事ではありませんでした。
ただ毎日そこにある景色でした。

家づくりを始めたあの夏、
なぜあんなにも自然に「庭が欲しい」と思ったのか。
地鎮祭の日、ロープの内側に立ちながら、
少しだけ分かったような気がしました。


上棟の日には、長女と二人で現場を見に行きました。
朝にはなかった柱が立ち、梁が渡り、
見上げるたびに家の形が変わっていく。

その景色を見ながら、長女は嬉しそうに言いました。
「おうち作る屋さんになるー!」
思わず笑ってしまいました。

木の香り。
職人さんたちの声。
空へ向かって組み上がっていく柱や梁。
あの日の何かが、いつかふと心に浮かぶ日が来るのかもしれません。

振り返ると、私の中に残っているものも、そんな何気ない景色ばかりです。
自然の中で遊ぶこと。
手を動かすこと。
物を大切にすること。
どれも、当時は何とも思っていなかったことばかりです。

この家でも、特別な思い出をつくろうとは思いません。
妻と過ごす日々。
家族で囲む食卓。
庭の木陰。
雨の音。
季節の実を摘むこと。
夕暮れの光。
そんな毎日が、ただ静かに積み重なっていけばいい。
思い出せる景色と、思い出せない景色があります。

この家で過ごす何気ない一日も
いつか娘たちがふと振り返る景色の中にあったら。
それだけで、十分だと思っています。

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